リスチール湿地へ

「わわっ…」
ぬかるみに足を取られて、転びそうになるのをぐっとこらえる。
「まったく、ヒューマンってのは不便よねえ」
その横を、ふふんと鼻を鳴らしながら妖精――リリィが通り過ぎた。
「いいなぁ、リリィ……」
三色ゼリーたちも泥にまみれることなく、
完全に定位置になった自らの頭と肩で、悠々と過ごしている。
「あ~あ、確かに湿地とは聞いていたけど……」
まさか、こんなに水と泥に囲まれた場所だとは。

リスチール湿地―――
イスピーナの魔物使いに勧められて訪れた場所。

そこまで強い魔物も出ず比較的安全だと言われたものの、
足を踏みしめる度にじわりと滲み出る泥に、来たことをわずかに後悔してしまう。

「歩きにくいってのは盲点だったなあ」
「でも、会ってみたいんでしょ?」

挿絵1

「そうそう、本の挿絵でしか見たことなかったからね」
――――マーメイド。
このリスチール湿地に出現すると魔物使いが教えてくれた瞬間、胸が高鳴った。

上半身は美しい女性で、
下半身は輝く鱗と長いひれを持つ魚。
幼いころに見たその美しい姿を思い出すと、
その高揚感は、抑えられずにはいられなかった。
「……シャルルも男の子だよねえ」
「純粋な興味だからね。
それに、リリィにだって会いたいと思ってたよ」

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