マーメイドの誘い

「さあ、こっちに来て遊びましょ?」
甘い誘いの声と、昔書物で見た挿絵以上の美しさに
しばらくぽかんと口を開け惚けてしまう。
「何て顔してんのよ」
呆れたリリィの一言で、正気に返った。
「いや〜、実際に見るとやっぱり綺麗なんだなあ。
足が本当に鱗なんだ……」
「ふふっ、もっと近くで見ていいのよ?」
「へっ?それじゃあ、遠慮なく……」
先へ進もうとすると、リリィが腕を引いて止めた。

「ま、待ってよ」
「ん?どうしたんだ?」
「もうちょっと危機感持ちなさいよ!
かたくなに水辺へ誘ってくるなんて、なんかあると思わないの?」
「何か?ただ遊びたいだけなんじゃないかな?」
「だから!それが怪しいって言ってんのよ」
「そうなのかなあ?」

押し問答に反応するかのように、マーメイド達はくすくすと笑い出す。

挿絵1

「怪しいですって、私達は遊びたいだけよ」
「疑い深い女の子は、嫌われちゃうよ?」
高く響くマーメイドたちの笑い声とは裏腹に、リリィの表情は険しくなった。

「余計なお世話だよ…!」
ふんっ、と鼻を鳴らしている合間に、マーメイドの一人が水辺をつたい
すぐ近くまで来て手を伸ばす。
「さあ?」
伸ばされた細く白い手に反応したのは———

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